雨の日に潜む生活と防犯の落とし穴
地球温暖化のためか、春が短くなり、季節は一気に夏の暑さへ…。その前に、多くの人が程度の差はあれ憂鬱になる梅雨の到来となります。雨の日が多くなり、ジメジメして気分的にも過ごしにくい季節ですが、今回は、雨の日の生活における日常的なリスクや防犯対策、安全・安心な暮らしなどについて考えてみます。
雨が降ることに代表される天候の悪い日が、晴天の日と比べてどのようなリスクがあるか、もしくはどのようにリスクが増大するかを考えてみましょう。
まず屋外では地面が濡れることにより滑りやすくなることです。スロープや少しの坂、その他タイル、マンホール、鉄板、横断歩道の白線などで滑って転倒するリスクがあります。さらに室内やオフィスにおいても濡れた靴底や傘のしずくで床が滑りやすくなり、階段なども転倒の危険があります。雨の日はとくに足元に注意が必要になります。
また交通事故のリスクが増加すると言われています。降水などで視界が悪くなり、歩行者や自転車の発見が遅れがちになります。ブレーキが利きにくかったり、クルマ、バイク、自転車においてもスリップしやすくなります。首都高速道路株式会社の調べによると、雨天時以外に比べ、雨天時の1時間あたりの死傷事故件数は約4倍というデータがあります。他方、歩行者側でも傘で視界が狭められ、危機回避や危険察知が遅れるなどのリスクが増大します。
傘によるケガや事故も発生します。雨の日のケガの統計では、傘に関連する事例が報告されています。傘は手に持って使用しますから、例えば、傘で視界が狭くなり、人とすれ違う際に傘が身体に当たったり、他人に水を飛ばしたことによるトラブルなども少なくありません。風が強い日だと壊れた傘が飛んできてケガをするというようなリスクも考えられます。
その他、手に持っていたスマホ、バッグに入れていたもののノートパソコンなどが濡れて故障するといった持ち物や電子機器の水濡れリスクもあります。交通機関の遅延や混雑が発生し、約束の時間に遅れたり、転倒や押し合いのリスクもあります。
雨の日って何となく気分が…と気分の問題だけでなく、前述のようなさまざまなリスクが潜んでいることをお分かりいただけたでしょうか。それらのリスクを踏まえ、転倒やトラブルに巻き込まれないように行動すべきでしょう。
では、雨の日の防犯上のリスクはどのようなことがあるのか考えてみましょう。雨の日は視界や音、注意力が制限されるため、防犯上のリスクも晴れの日に比べて高くなる傾向があります。
まず視界の悪化によって「死角」の範囲が増大します。傘や雨避けのフードと使用していると視界が遮られ、周囲が見えにくくなり、不審者などの接近に気づきにくくなるはずです。外出を控える人も増えるため、不審者に対する周囲の人の目も減り、犯罪の行いやすい状況が作られます。防犯カメラを利用している場合も、雨がレンズに付着していることが分かるとその抑止効果が薄れる恐れがあります。警察庁「犯罪統計資料 令和5年1~12月分」(2024年2月)によれば、一年で最も降水量の多い、梅雨真っ盛りの6月が侵入窃盗数のピークと重なります。犯罪件数としては5月がそれに次いでいます。
また雨の降り方にもよりますが、雨音や触れた路面の影響で、不審者が近づいてきても音に対して気づきにくくなる可能性があります。何かが起こった場合も、助けを求める声や物音が周囲に届きにくくなる恐れがあります。
さらに、雨の日にマスクやフード、傘をさすのは自然なので、不審者が顔を隠すのには最適な状況です。監視カメラでも特定しづらく、雨具で特徴が隠れるため、ひったくり犯などの逃走時の追跡も困難になるでしょう。このように少し考えただけでも、天候が悪い時は不審者にとって有利な状況になりえます。視界が悪くて周囲の目も少なく、音にも気づかれにくいような条件では空き巣や居空きといった犯行時間に余裕を与えかねません。
他にも雨の日は戸締まりの甘さを指摘する声もあります。雨で帰宅時に荷物や傘で手がふさがり、玄関や窓の施錠が甘くなるケースや、換気目的で少しだけ窓を開けておくなど、侵入の隙が生まれやすいと警鐘を鳴らす専門家もいます。
最後に、雨の日の防犯対策について考えてみましょう。防犯対策で重要なのは日頃から犯罪が起こりにくい環境にしておくことです。
犯罪者が嫌う心理的な4つの要素(時間・音・光・目)があります。これら要素を利用した防犯対策を「防犯の4原則」といい、これら総合的に対策にすると未然に犯罪を防ぐことに有効とされています。
例えば、フードや傘で視界が狭まることを意識して周囲を定期的に確認したり、雨の日はイヤホンを使わず周囲の音にも気を配ったり、雨はとくに戸締まり・施錠の確認を心がけたり、防犯ブザーやライトを携帯するなどの対策が考えられます。
もちろん、普段からの防犯対策も大切です。外からの視界を遮る大きな植栽や不要な荷物などの障害物を整理して視界を広げておき、周囲からの視認性や監視性が高めたり、音に気付きやすくするために敷地内に音の出る防犯砂利を敷いたり、警報器を設置して音による威嚇することも効果的です。加えて、屋外対応の防犯カメラやセンサー付きライトを設置することで不審者に近づかれにくい状態にすると良いでしょう。
屋外のセキュリティ機器を設置する場合は防水仕様にするなど、雨天時のことも考えて準備することでより効果的な対策となるはずです。
また風雨に晒される屋外設備は疲労の度合いも大きく、メンテナンスが重要です。鍵の開け閉めだけと思っていた錠前システムもじつは繊細で、ゴミやほこり、さらに湿気、またそのメンテナンスの方法によっても寿命は変わってきます。
ただし、そのメンテナンスは簡単ではありません。錠前やセキュリティ機器は専門知識や技術を要します。誤った方法でメンテナンスをしてしまうと余計に状態を悪くする可能性もあるため注意が必要です。
また、防犯の4原則に則った総合的な防犯は、高い専門性も求められることもあります。今回は雨天や梅雨を例にしましたが、さまざまなリスクやそれに対する対策について、検討している方やお悩み中の方は鍵と防犯の専門のプロに相談するとよいでしょう。